サラダボール公演「髪をかきあげる」「川底にはみどりの魚がいる」
サラダボール公演 四国学院大学ノトススタジオ
「髪をかきあげる」「川底にはみどりの魚がいる」
作:鈴江俊郎、演出:西村 和宏
イイもの見たなあ、としみじみ思う。
こんなに面白い演劇が、自宅から1時間のところで観られるようになったなんて、幸せだなあと。
どちらの作品も20年前の作品であるにもかかわらず古びてないところがすごい。きっと、“人”をきちんと描いているからだろう。言葉の美しさもあるだろう。
そしてそれを“現代”の物語として立ち上げている西村さんの演出もすごい。丁寧に、緻密に、積み上げられていったんだと思う。
それを支えるカミイケさんの美術もすばらしい。物語に奥行を与えていたと思う。
サラダボール団員である演劇コースOBたちはもはや盤石の構えだし、現役学生たちの演技は眼を見張るものがある。彼らの身体を通して、観ている人が安心して芝居の世界に身を委ねることができる。
「髪をかきあげる」は、登場する女性4人(1人は出てこない)のどの女性にも“自分”を見た。切ないやら痛いやら。グサグサ刺さる。
男性のなかでは山本清文さんが演じる男性が「いるよね、こういう男。でも憎めないんだよね」という愛すべきキャラクターとして成立していて素晴らしかったと思う。女性ならわかるはず(笑)
「川底にはみどりの魚がいる」は、対象的な女性2人の目を通して、1人の男性を見る。どちらの女性の気持ちもわかる。まるで自分の“正”と“負”を並べられているような。
そして、ラストの2人のそれぞれの言葉が、そのセリフを発するところまで登りつめた2人の女優の気迫と重なって、胸をうつ。
どちらの作品も本当に素晴らしかった。
演劇は“生”であることが本質であり、まさに“今”しか体験することができない。
そして、その素晴らしさを前もって伝えることが難しい。体験しないと、その本質に触れることができない。
地域だと、素晴らしさを語ったときにはすでに日程が終わっていることが多く、“クチコミ”が効力をもつことが難しい。
しかし、今回の公演は、あと2日ある。3公演ある。まだ、素晴らしさを伝えるのに間に合う。
ぜひ、観てください。